【福岡】神武天皇を祀る岡田宮へ — 古事記に登場する北九州唯一の古社と、八咫烏・金鵄・恵方犬
黒崎駅から徒歩5分 — 古事記にその名が刻まれた神社
今回訪れたのは、北九州市八幡西区・黒崎の岡田宮(おかだぐう)です。JR黒崎駅から歩いて5分ほど、にぎやかな商店街のすぐそばに鎮まるこの神社、実はとんでもない歴史を持っています。ご祭神は初代天皇・神武天皇。日本で一番古い書物である古事記や日本書紀にその名が登場する神社で、ガイドの方によれば、記紀に名を残す神社は北九州市内ではここだけなのだそう。2000年以上も前から、この地の氏神様として祀られてきました。
面白いのは、江戸時代にはこの神社で寺子屋が開かれていたということ。当時テキストとして使われていた古事記の写本が今も大切に残されていて、ガイドの方が見せてくださいました。古事記は上つ巻・中つ巻・下つ巻の三巻構成で、神武天皇の物語が書かれているのは中つ巻。その中に、確かに「岡田宮」の名前が出てくるのです。そして神社は、まさにその古事記に記された地の跡に建っています。
神武天皇の東征 — 日向から橿原へ、その途中の滞在地
神武天皇は、日本を建国したと伝えられる初代の天皇です。もともと天皇家は宮崎県(日向の国)にありましたが、「日本を治めるには中央へ行ったほうがよい」と、4人の兄弟で相談して東へ向かうことを決めます。これが有名な「神武東征」。宮崎から大分、そして福岡のこの岡田宮へ——古事記には、神武天皇がこの地に一年とどまったと記されています。その後、広島、岡山、大阪、和歌山を経て、最後に奈良県の橿原(かしはら)で初代天皇として即位されました。
日本を建国した神様なので「開運の神様」、そして東征の道中で各地の敵を打ち破ったことから「勝利の神様」。それが岡田宮のご神徳です。境内には、この勝利にちなんだ2つの銅像——八咫烏(やたがらす)と金鵄(きんし)が建てられています。
八咫烏 — サッカー日本代表のエンブレムに宿る、道案内の神様
八咫烏という名前、サッカーファンならピンとくるはず。サッカー日本代表のユニフォームの左胸には、3本足のカラス・八咫烏のエンブレムがついていて、その3本目の足はサッカーボールをしっかり押さえています。ガイドの方によれば、デザインをされた方が「日本代表を勝利の道へ案内してくれるように」という思いを込めたのだといわれています。
そのルーツがまさに神武東征の物語。神武天皇が奈良へ入ろうとしたとき、険しい山中で道に迷ってしまいます。そのとき高天原(たかまがはら)から八咫烏が遣わされ、「奈良はこちらですよ」と一行の道案内をしたという故事が残されているのです。
八咫烏は「道案内の神様」。岡田宮では、参拝した方が「自分の人生の道案内をしてくれますように」と願いを込めて小さな八咫烏の像を奉納できるようになっていて、境内にはたくさんの八咫烏がずらりと並んでいます。人生の岐路に立っている方には、なんとも心強い光景です。
金鵄と子宝恵方犬 — 撫でてお祈りする、2つの像
もうひとつの銅像が金鵄——金色の鳶(とび)です。神武天皇が戦いに苦しんでいたとき、金色に輝く鳶が弓の先に舞い降りて敵の目をくらませ、勝利に導いたと伝えられる、勝利のシンボル。受験や就職試験など「ここ一番」の合格祈願に訪れた方は、この金の鳶を撫でて帰られるそうです。
そしてユニークなのが「子宝恵方犬(こだからえほういぬ)」。安産の象徴である犬の像で、周りには子・丑・寅……と十二支の玉がぐるりと並んでいます。安産祈願に訪れた妊婦さんは、自分の干支の玉を撫で、犬のお腹を撫でてお祈りをして帰られるのだとか。
この犬、ただの犬ではありません。名前の通り「恵方犬」で、毎年12月31日の大晦日に、新しい年の恵方(その年の縁起のよい方角)へと向きが変えられるのです。年に一度だけ向きを変える犬の像——初詣に訪れたら、今年はどちらを向いているか確かめてみてください。
福岡1位と評判の御朱印と、石に投げて割る「厄除け玉」
岡田宮といえば、御朱印の人気ぶりも見逃せません。ガイドの方によれば、御朱印の人気ランキングサイトで福岡県1位になったこともあるそうで、毎月デザインが替わり、年間ではおよそ100種類にもなるのだとか。端午の節句など季節の行事に合わせたものから、八咫烏や金鵄をかたどった精巧な切り絵の御朱印まで、何度訪れても新しい出会いがあります。
もうひとつの名物が「厄除け玉」。全部で6種類あり、色によってご神徳が異なるという玉です。境内には、神武天皇が即位した奈良県橿原市から運ばれてきた、天皇ゆかりの大きな石があります。授かった厄除け玉をこの石に投げて割ることで、厄を落とすという仕組み。玉が割れる瞬間の爽快感とともに、心のもやもやも一緒に砕けてくれそうです。
まとめ — 7月は黒崎祇園山笠、開運と勝利の神様に会いに
岡田宮では春祭り・夏祭り・秋祭りとさまざまなお祭りが行われますが、一番有名なのは毎年7月の「黒崎祇園山笠」。8台の山笠が4日間にわたって黒崎の街を練り歩く、400年以上の歴史を持つ勇壮な祭りです。回転しながら進む山笠は「喧嘩山笠」とも呼ばれる迫力で、この時期に訪れるならぜひ合わせて楽しみたいところです。
古事記に名を残す2000年の歴史、道案内の八咫烏、勝利の金鵄、大晦日に向きを変える恵方犬、そして福岡屈指の人気を誇る御朱印。岡田宮は、コンパクトな境内に「開運」と「勝利」の物語が詰まった神社でした。受験や就職、新しい挑戦を控えている方、人生の進む道に迷っている方——黒崎駅から徒歩5分、日本建国の神様が、きっと背中を押してくださるはずです。
アクセス・基本情報
- 名称
- 岡田宮
- 住所
- 福岡県北九州市八幡西区岡田町1-1
- アクセス
- JR鹿児島本線「黒崎駅」から徒歩約5分。筑豊電気鉄道「黒崎駅前駅」からも徒歩圏内です。
- 駐車場
- あり(台数に限りあり)
- 時間
- 境内参拝自由(社務所・御朱印の受付は日中のみ)
- 料金
- 参拝無料