【福岡】宮地嶽神社の奥之宮八社巡りをガイドの方と歩いてきた — 大注連縄の秘密と日本一の石室古墳
毎年初詣に来ている神社の「知らない顔」に出会った
福岡県福津市の宮地嶽神社。私は毎年初詣に参拝し、ご祈祷もお願いしている、いわば「通い慣れた」神社です。夕陽が参道の延長線上にまっすぐ沈む「光の道」で全国的に有名になり、日本一の大注連縄(おおしめなわ)、大太鼓、大鈴という「三つの日本一」でも知られています。
今回はご縁があって、ガイドの方に境内をじっくり案内していただく機会に恵まれました。知っているつもりだった神社の、知らないことだらけの奥の顔。この記事では、その案内で教わったことを、歩いた順にたどりながら紹介します。
日本一の大注連縄は、田植えから一年がかりで作られる
拝殿に掲げられた大注連縄について、ガイドの方に「どこまで知っていますか」と聞かれ、「毎年掛け替えている、ということは知っています」と答えたところ、「50点」でした。正解はその先にありました。この大注連縄、神社の田んぼで稲を育てるところから始まり、田植えから数えると一年がかりで作られているのだそうです。境内で育てた稲で毎年新しく作り替える——「毎年変える」という点では間違いなく日本一でしょう、とのことでした。
そもそも注連縄とは何か。改めて聞かれると答えに詰まりましたが、教わった答えはシンプルでした。注連縄から奥が神様の世界、手前が私たちの俗世界。つまり二つの世界の境界線なのだそうです。何気なくくぐっていた場所が、実は結界だったわけです。
拝殿の前には二本並んだ「夫婦桜」があり、2月下旬頃に満開になるとのこと。さらに境内には「開運桜」と呼ばれる早咲きの桜もあり、沖縄を除けば日本で最も早く咲くといわれているそうです。春先に参拝する楽しみがまた増えました。
奥之宮八社巡り — 「一社一社巡れば大願叶う」
宮地嶽神社の本殿の奥には、実は八つの神社が並んでいます。「奥之宮八社」です。本殿が開運・総合運を司る、いわば総合窓口だとすると、八社はそれぞれ専門分野を持った神様たち。「一社一社お参りすれば大願叶う」といわれており、これが宮地嶽神社の「大願成就」の由来です。
一番社の七福神社には弁財天さまや布袋さまが祀られ、福徳や商売繁盛を願う人に人気。二番社は五穀豊穣と商売繁盛の稲荷神社で、こちらで結婚式を挙げることもできるそうです。ここから先、順に巡っていくと、雰囲気の違う世界が次々に現れます。
三番社・不動神社 — 中でお参りできる石室古墳としては日本一
八社巡りのハイライトが、三番社の不動神社です。神社なのに線香の香りが漂う、少し不思議な空間。これは神社とお寺が一体だった「神仏習合」の時代の名残だそうです。
中に入ると、まるで洞窟のような別世界。実はここ、6世紀末から7世紀頃に築かれた石室古墳の中なのです。この地域を治めていた豪族のお墓と考えられており、中に入ってお参りできる石室古墳としては日本一の規模とのこと。古事記が書かれるより前の時代のお墓の中で手を合わせられる場所は、全国でもそうありません。
さらに驚くのが出土品です。この古墳からは20点あまりの国宝が見つかっています。3メートル近い黄金づくりの大太刀、そして金の鐙(あぶみ・馬具)にはペルシャ由来の唐草模様が刻まれていたそうです。はるか大陸との交易を思わせる品々で、それだけの財力を持った人物がこの地にいたということ。「地下の正倉院」とも呼ばれるゆえんです。
そしてガイドの方が教えてくれた話がしびれました。「日本一の石室があって、日本一のお宝が出てきた。だったら日本一の神社にしようじゃないかと、みんなで日本一の大注連縄を作った。それが原点なんですよ」。あの大注連縄の裏に、そんな物語があったとは。
恋の宮、かまどの神様、薬師神社 — 個性豊かな八社を巡る
四番社の万地蔵尊は、子どもの守り神であり、旅人の守り神でもあるお地蔵さま。そこから五番社の恋の宮に進むと、ハートいっぱいの奉納物が目に飛び込んできて、雰囲気がガラッと変わります。恋愛成就と、女性の心身を守る神様が祀られており、絵馬に書かれた願いごとを読んでいると、こちらが少し照れてしまうほどでした。
面白かったのが、鳥居の上に小石がたくさん乗っている光景について質問したときのこと。「信仰というのは、勝手に生まれるんです」とガイドの方。誰かが一人始めたことをみんなが真似て、いつの間にかひとつの信仰になっていく。神社が生きている場所なのだと実感するお話でした。
六番社の三宝荒神は、かまど・火の神様、つまり台所の神様です。「台所がきちんとしていれば、その家は栄える」——年末には台所を預かる方々がお札を受けに来られるそうで、ここでしか受けられない専門のお札もあります。境内には大きなかまどがしつらえてあり、なぜか鶴の置物も。これも「誰かが奉納して、そのまま定着した」ものだそうです。
七番社の水神社は、人間の生活の根源である水の神様。そして八番社の薬師神社は病気平癒の神様で、「願掛け奉書」という紙に体の悪いところを書いて納めると、それに基づいてご祈祷をして、ご神殿に奉納していただけます。ここまで専門特化したお願いの仕方は初めて見ました。
ちなみに不動神社では「身代わり不動」というお守りが人気で、車に付けておくと事故のときに身代わりになってくださるといわれています。父が毎年買っていたお守りがこれだったのかと、思わぬところで合点がいきました。ドライバーの方はぜひ。
神様が守りたくなるのは、どんな人か
八社すべてを巡り終えて、これで大願成就。「後ろに神様がいっぱいいる感じがします」と伝えると、ガイドの方が最後に印象的な話をしてくださいました。
「神様が守ってあげたいと思うのは、やっぱり日々努力している人じゃないですかね。棚からぼた餅ではない。神頼みはとても大事。でもその後ろにはご先祖様がいて、神様がいて、ちゃんと見守ってくれている。だから、見守るに足る自分であろうと努力すること。それが大事なんじゃないでしょうか」
光の道と大注連縄だけでも十分に魅力的な神社ですが、その奥にはもっと深い物語が眠っていました。参拝の際は、ぜひ本殿の奥まで足を延ばして、八社巡りまで体験してみてください。毎年通っていた神社の見え方が、きっと変わります。
アクセス・基本情報
- 名称
- 宮地嶽神社
- 住所
- 福岡県福津市宮司元町7-1
- アクセス
- JR鹿児島本線「福間駅」からバス約5分「宮地嶽神社前」下車、徒歩すぐ。福間駅から徒歩の場合は約25分。
- 駐車場
- あり(無料)。光の道の時期や初詣は満車になりやすいので公共交通機関がおすすめ。
- 時間
- 参拝自由(授与所は7:00〜19:00頃)
- 料金
- 参拝無料