ARCANA/コラム/【福岡】日本三大八幡宮・筥崎宮へ — 「敵国降伏」の扁額と元寇の物語、秋を告げる博多三大祭り「放生会」
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【福岡】日本三大八幡宮・筥崎宮へ — 「敵国降伏」の扁額と元寇の物語、秋を告げる博多三大祭り「放生会」

I

日本三大八幡宮のひとつ、筑前国一宮へ

今回訪れたのは、福岡市東区箱崎の筥崎宮(はこざきぐう)です。大分の宇佐神宮、京都の石清水八幡宮とともに「日本三大八幡宮」に数えられる大社で、創建は延喜21年(921年)。かつての筑前国の「一宮(いちのみや)」でもあります。

この一宮とは何か、ガイドの方が分かりやすく教えてくださいました。昔、朝廷から国司——今でいう県知事のような役人が任地に赴いたとき、まず最初にお参りするのがその国の一宮。つまり筥崎宮は、筑前国(今の福岡県北西部)で最初に参るべきとされた、それだけ格式の高い神社ということです。福岡市の中心部から地下鉄でわずか数駅、駅から徒歩3分という近さで、これほどの古社に出会えるのですから、福岡はやはり歴史の宝庫です。

II

「筥崎宮」と「箱崎」— 一文字違いに秘められた由来

ここで面白いのが、神社の名前の表記。地名は「箱崎」なのに、神社は「筥崎宮」。よく見ると「はこ」の字が違うのです。これにはちゃんとした由来があります。

筥崎宮の主祭神は、第15代・応神天皇。その応神天皇がお生まれになったとき、胞衣(えな)——へその緒や胎盤のことです——を筥(はこ)に納めてこの地に埋め、その印として松を植えたと伝えられています。この松は「筥松(はこまつ)」と呼ばれ、今も楼門のかたわらに立つ、境内の隠れた見どころのひとつ。「筥を埋めた岬」に建つお宮だから筥崎宮、というわけです。

そして、神聖な「筥」の字を地名にそのまま使うのは恐れ多い——ということで、町の名前のほうは普段づかいの「箱」の字を当てた、とガイドの方。地図の上の一文字に、千年前の人々の畏敬の念が刻まれているなんて、なんだか素敵な話です。

III

ご祭神は応神天皇・神功皇后・玉依姫命

筥崎宮には三柱の神様が祀られています。主祭神の応神天皇は「八幡神(はちまんしん)」とも呼ばれ、全国で最も多く祀られている神様。「○○八幡宮」「○○八幡神社」という名前の神社が日本一多いのは、この神様を祀っているからです。かつての神仏習合の時代には、お坊さんの姿をした「八幡大菩薩」として絵巻物に描かれるなど、神様と仏様が一体で信仰されていた歴史も残ります。

二柱目は、応神天皇の母・神功皇后(じんぐうこうごう)。このコラムでもたびたび登場してきた、とにかく規格外の女性です。夫の仲哀天皇が「海の向こうへ渡れ」という神託を疑い、香椎の地で急逝してしまったため、その神託を自ら果たすことを決意。しかもそのとき応神天皇を身ごもっていて、腰に石を巻いて出産を遅らせながら陣頭指揮を執って海を渡ったと伝えられています。ガイドの方いわく「元祖・肝っ玉母ちゃん」。まったく同感です。

三柱目は玉依姫命(たまよりひめのみこと)。初代・神武天皇の母とされる神様ですが、ガイドの方によれば「玉依姫」とは本来、神霊が依り憑く巫女を指す呼び名でもあったのだとか。大和政権より前の時代、政治は男性が、祭祀は女性が担う時代が長く続いたそうで、「まつりごと」という言葉の奥行きを感じるお話でした。

IV

「敵国降伏」の扁額 — 元寇と亀山上皇、神風の物語

筥崎宮の楼門を見上げると、「敵国降伏(てきこくこうふく)」と書かれた大きな扁額が掲げられています。これこそ、この神社を象徴する歴史の舞台装置です。

時は鎌倉時代中期、フビライ・ハン率いる元の大軍が日本に攻め寄せた元寇。対馬や博多湾岸は、まさに国防の最前線でした(ゲーム「Ghost of Tsushima」で描かれたあの時代です)。このとき亀山上皇は筥崎宮に「我が身をもって国難に代わらん」——私の身はどうなってもいいから、この国難に打ち勝たせてほしい——と祈願されました。すると暴風、いわゆる「神風」が吹き荒れ、元の軍勢は撤退していったと伝えられています。

ここで大事なのは「敵国降伏」の意味だとガイドの方。武力で相手をねじ伏せる「覇道」ではなく、徳の力によって相手が自ら「参りました」と頭を下げてくる「王道」を表した言葉なのだそうです。勝つことを願いながら、その勝ち方に徳を求める——なんとも日本らしい精神が、この四文字に込められています。

V

ご利益はズバリ「必勝」と「厄除け」

こうした歴史から、筥崎宮のご利益はズバリ「必勝」と「厄除け」。国難に打ち勝った神社として、古くから足利尊氏や豊臣秀吉ら名だたる武将たちが参拝してきたと伝えられ、勝運の社としての信仰は現代にも脈々と続いています。

その象徴が、毎年ニュースにもなるプロスポーツチームの必勝祈願。福岡ソフトバンクホークスも、アビスパ福岡も、シーズンの必勝を祈願しにこの筥崎宮へやって来ます。受験や試合、仕事の勝負どころを控えている方には、これ以上ない味方になってくれる神社です。

VI

まとめ — 秋を告げる博多三大祭り「放生会」

筥崎宮といえば忘れてはならないのが、毎年9月12日から18日まで行われる「放生会(ほうじょうや)」。春の博多どんたく、夏の博多祇園山笠と並ぶ博多三大祭りのひとつで、「放生会が始まると博多に秋が来る」といわれる風物詩です。もともとは生き物の命を大切にし、実りの恵みに感謝する仏教由来の行事で、境内の池に生き物を放つ神事にその心が受け継がれています。これも神仏習合の名残なのだそう。

祭りの期間中は、約1kmの参道にずらりと露店が立ち並び、大変なにぎわいに。「梨も柿も放生会」という言葉があるほど、秋の味覚とともに親しまれてきました。名物は、博多人形師さんたちが手がける愛らしい「放生会おはじき」に、ガラスの音色がかわいい「チャンポン(ビードロ)」、そして放生会名物の新生姜。ちなみに「放生会」は一般には「ほうじょうえ」と読みますが、博多っ子は昔から「ほうじょうや」。この読み方も土地の文化です。

千年の格式、元寇の記憶、勝負の神様、そして秋の大祭。筥崎宮は、福岡の歴史と暮らしがぎゅっと詰まった神社でした。天神や博多からのアクセスも抜群なので、福岡観光の際は——そして人生の勝負どころの前には——ぜひ足を運んでみてください。

Accessus

アクセス・基本情報

名称
筥崎宮
住所
福岡県福岡市東区箱崎1-22-1
アクセス
福岡市地下鉄箱崎線「箱崎宮前駅」1番出口から徒歩約3分。JR鹿児島本線「箱崎駅」からも徒歩約8分です。
駐車場
あり(有料)
時間
境内参拝自由(お守り・御朱印の受付は日中のみ)
料金
参拝無料
公式サイト
https://www.hakozakigu.or.jp/
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